【監修】
渡邉 八寿子 先生
国立病院機構 相模原病院臨床研究センター
アレルギー性疾患研究部
管理栄養士、調理師

牛乳アレルギーの特徴

牛乳アレルギーのアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因物質)は、発酵や加熱をしてもアレルギーを起こす力(アレルゲン性)はあまり弱まりません。牛乳をシチューに入れて加熱する、ヨーグルトやチーズのように発酵するなど調理・加工しても、アレルゲン性の変化が少ないのが特徴です。

牛乳はカルシウムの良質な供給源であるため、牛乳を除去することによってカルシウム不足に陥りやすくなります。牛乳を完全除去している子どもと牛乳の除去が必要ない子どものカルシウム摂取量を比較すると、牛乳を完全除去している子どもの方が、カルシウム摂取量は低いことが報告されています。日頃からカルシウムを多く含む食品(小魚や大豆製品など)やカルシウム強化食材などを積極的に活用し、カルシウムを補うようにしましょう。

アレルギー用ミルクとは

牛乳アレルギーの原因物質である「タンパク質」を細かく分解し、牛乳アレルギー児でも利用できるように作られたのがアレルギー用ミルクです(表)。母乳や粉ミルクの代替として利用でき、カルシウムや鉄・ビタミンなどの微量栄養素を補うことができます。ただし、分子量が小さくなるほど、アミノ酸臭が強くなり、特有の味やにおいがあり飲みづらいと感じるお子様もいます。このような場合は、そのまま飲むのではなく離乳食や料理に利用するとよいでしょう。

アレルギー用ミルクは種類によって組成や成分が異なるため、医師の指示に従って使用するようにしましょう。大豆を原料とした「大豆乳」もあるので、大豆アレルギーでなければ活用してください。

牛乳アレルギー児が利用できるミルク

画像: 出典:厚生省労働科学研究班による「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」食物アレルギー研究会,p18 表6を参考に作成

出典:厚生省労働科学研究班による「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」食物アレルギー研究会,p18 表6を参考に作成

牛乳完全除去の場合の「除去の範囲」

牛乳・乳製品の完全除去をする場合、食べられないものを以下に示しました。

〈食べられないもの〉
・牛乳
・乳製品:牛乳など、乳を原料として作られた食品(バター、ヨーグルト、生クリーム、チーズなど)
・牛乳や乳製品を含む加工食品(パン、お菓子、チョコレート、アイスクリーム、乳酸菌飲料、ハム、ソーセージ、カレーやシチューのルウなど)
・牛乳以外のやぎ乳やめん羊乳など

※やぎ、めん羊乳は牛乳アレルギー表示の範囲外ですが、牛乳と強い交差抗原性(原因食物とタンパク質の構造が似ているため、アレルギー症状を起こす特性のこと)があり、牛乳アレルギーの方は使用できません。

〈基本的に除去の必要がないもの〉
・牛肉
・乳化剤(一部は除く)、乳酸カルシウム、カカオバター、乳酸菌、豆乳など

画像: 牛乳完全除去の場合の「除去の範囲」

牛乳を使わずに食事を作る場合の注意点

ご家庭で牛乳・乳製品を除去した食事を作る際は、アレルギー表示の見方や、代替食品の選び方などのポイントを押さえて、安全に取り組んでいきましょう。調理での注意点は、「【管理栄養士監修】牛乳アレルギーで不足しやすい栄養素の補い方と食品表示の見方、牛乳を除去した調理の工夫を紹介します」を参考にしてみてください。

まとめ

牛乳や乳製品は、離乳食の段階から使える良質なカルシウムやタンパク質の供給源であるため、牛乳の完全除去が指示された場合は、栄養状態に対する不安があると思います。
アレルギー用ミルクやカルシウムが豊富な食材、カルシウム強化食品などを意識して摂り、カルシウムを補うようにしましょう。

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