「みんなと同じものを食べること」は一見簡単そうなことだけれど、アレルギーの子たちにとってハードルの高いことかもしれません。

はじめての「みんなと一緒」

長男が食物アレルギーの診断されてしばらく経った頃のお話です。

 先日、代替給食をされている方の記事を目にしました。
その記事のお母様は、事前に給食の献立表をもらい、その日の給食になるべく近くなるように試行錯誤し、お昼前に届けるということを毎日続けていらっしゃいました。
食材の工夫はもちろん、温かいまま食べられるように保存容器も工夫されていました。
なるべくみんなと同じようなご飯を、同じ教室で食べさせてあげたいというお母様の気持ちが、たくさん詰まっていました。

その記事を読み、胸が温かくなったと同時に、昔のことを思い出しました。

 長男が食物アレルギーの診断されてしばらく経った頃のお話です。
除去食を考慮した離乳食も思うようにいかず、夜に寝てくれない、さらにはじめての子育てということも重なり、私は体力も気力も消耗し、疲れ切っていました。
実家は遠方なので気軽に頼れる距離ではなく、夫も仕事で多忙なため、今で言うほぼワンオペ育児でした。
そのうち人と会うのも、外出する事も面倒くさくなり、家で過ごすことが多くなっていた時、支援センターの読み聞かせ会で知り合ったママさんからお誘いの連絡をもらいました。

 「簡単なクリスマス会をするから、よかったら参加しない?何も持って来なくていいからね」
気持ちがダークモード真っ只中だった私は、正直乗り気ではなかったけれど、せっかく誘ってもらったのだからと参加することにしました。

 5、6組のママと子供たちが集まり、おしゃべりしたりそれぞれが遊んだり、ゆったりとした自由な時間を過ごしていました。
しばらくしてケーキを食べることになり、「みんなで食べられるケーキ探したよ、これなら一緒に食べられるでしょ?」と登場したのが「アレルギー対応ケーキ」でした。

 事前にアレルギーの事を伝えていたどうか、あまり記憶が定かではないのですが、私たち以外にも乳製品アレルギーの子と、卵アレルギーの子がいたようで、全員が食べられるものを…と用意してくれていました。
「大人には物足りないかもしれないけど…」と言いながら取り分けてくれたケーキは、本当に美味しかった。

 アレルギーがある子もそうでない子も同じものを食べて、楽しそうにしている姿に、ほっこり。
それは、家族以外で経験する、はじめての「みんなと一緒」でした。
そこはとても素敵な空間で、私のやさぐれかけた心も穏やかにしてくれました。

 「みんなと同じものを食べること」は一見簡単そうなことだけれど、アレルギーの子たちにとってハードルの高いことかもしれません。
特に集団生活が始まると、難しいこともたくさん出てくるはず。
そんな中でも、同じ食卓を囲んで同じ食事ができることはとても幸せなことなのだと。
この先、アレルギーっ子とその家族が、少しでも笑顔で食卓を囲むことが増えればいいな…と改めて考えた一日でした。

管理栄養士「渡邊こずえ」

食物アレルギーっ子ママで、管理栄養士。
管理栄養士の免許取得後、食品会社・病院・エステティシャンや飲食店など様々な仕事を経験。
現在は、3人の子育てをしながら自身の体験や失敗をもとにイラストやコラムを書いていただいています。
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