【監修】
渡邉 八寿子 先生
国立病院機構 相模原病院臨床研究センター
アレルギー性疾患研究部
管理栄養士、調理師

必要最小限の原因食物除去の考え方

食物アレルギーの治療の基本は、原因の食物を食べないようにすることです(原因食物の除去)。その際に、食べると症状が誘発される原因食物のみを除去し、食べて症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べることを「必要最小限の原因食物の除去」といいます。

「血液検査結果(特異的IgE抗体)が陽性だから」、「アレルギーが心配だから念のため」などの理由で過剰な食物の除去をすることは避けます。血液検査結果が陽性だから必ず症状が誘発されるとは限りません。自己判断せずに、医療機関で食物経口負荷試験などの検査を行ってもらい、「食べられる範囲」について医師に判断してもらいましょう。

また、原因食物を食べて症状が誘発される量には個人差があります。例えば、同じ牛乳アレルギーでも、ごく微量の牛乳や乳製品(牛乳など、乳を原料として作られた食品:バター、ヨーグルトなど)を食べるだけで重い症状が誘発される人もいれば、牛乳の含まれるパン、お菓子類などは食べられる人もいます。「食べられる範囲」は食物経口負荷試験の結果などから医師が判断します。例えば、食物経口負荷試験で牛乳25mlが症状なく飲めることがわかった場合、自宅では牛乳25mlまでは飲んでもよいですし、乳が含まれているパンやお菓子も量を決めて食べることができます。

このように必要最小限の原因食物の除去を行うことで、過剰な食物制限により栄養状態が悪化することを防げるだけではなく、家族の調理に対する負担を減らし、本人や家族のストレスを軽減するなど、生活の質も高めることができます。

原因食物除去によって不足しがちな栄養素を補う

食物アレルギーと診断されても、原因食物の代わりに使用できる食品を食事に取り入れることはできます。主食(炭水化物)+主菜(タンパク質、脂質)+副菜(ビタミン、ミネラル)がそろったバランスのよい食事をすることで栄養不良に陥る心配は基本的にありません。

鶏卵アレルギーで卵や卵を使用した食品を除去するように指示された場合でも、肉類、魚類、大豆製品を積極的に摂取することで鶏卵の主な栄養素であるタンパク質を補うことができます。

ただ、牛乳アレルギーの場合はカルシウム不足が懸念されるため、カルシウム強化食品やアレルギー用ミルクなど、カルシウムが豊富な食品を意識して摂るようにしましょう。詳しくは、「原因食物別の食事のポイント」や「献立事例」を参考にしてみてください。

原因食物別の食事のポイント

誤食を起こさないよう注意しましょう

ご家庭で原因食物を除去した食事を作る際の注意事項

調理器具や食器は十分に洗浄すれば共有できますが、調理中の菜箸やお玉の共有は避けましょう。お子様の食物アレルギーの重症度によっては、専用の調理器具や食器を用意することもあります。また、原因食物を含む食品を調理した茹で汁や揚げ油にはアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)が残っている可能性があるため、家族と同じ油や煮汁、茹で汁は使用しないように気をつけましょう。

調理後の盛り付けや配膳時の間違えを防ぐために、食器は家族と別のものを使用するとよいでしょう。食物アレルギーのお子様が食べる料理が一目でわかりやすくなり、誤って食べてしまうリスク防ぐことができます。重症度により対応は異なりますので、主治医の指示に従って対応するようにしてください。

まとめ

食物アレルギーの治療と管理の基本は、医師による正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物除去です。除去によって不足しやすい栄養素は、代替食品を組み合わせて摂取することで補うことができます。
原因食物が症状なく食べられる日を目指して、家族で協力しながら安全に食生活を進めていきましょう。