【監修】
佐藤 さくら 先生
国立病院機構 相模原病院臨床研究センター
病態総合研究部
小児科医、アレルギー専門医

食物アレルギーは予防できる?

食物アレルギーは近年急速に研究が進んでいる分野です。さまざまな予防方法を耳にするかと思いますが、現時点で根拠が確認できている情報に基づいて行動することが大切です。

妊娠中・授乳中の食事

妊娠中や授乳中にお母さんが鶏卵や牛乳を除去することで赤ちゃんが食物アレルギーになるのを防ぐ効果はありません。偏りの少ない、バランスの良い食生活を心がけましょう。ただし、食物アレルギーと診断された赤ちゃんの一部には、授乳中のお母さんの食事とアレルギー症状が関係する赤ちゃんがいます。心配な場合には医師に相談しましょう。

離乳食

離乳食の開始を遅らせても、食物アレルギーを予防する効果はないと考えられています。最近の研究ではアレルギーに成りやすい体質のある赤ちゃんの場合、ピーナッツや卵を離乳食の早期から食べることで、ピーナッツや鶏卵アレルギーの発症を予防することが報告されていますが、全ての赤ちゃんに効果があるのかは明らかではありません。少なくとも食べ始めを遅くする意味はありません。

食物アレルギーの症状が出ていない赤ちゃんであれば、通常通り生後5~6カ月を目安に離乳食を開始し、成長に合わせて離乳食を進めることが推奨されています。アレルギー症状が心配な場合には、初めて食べる食材は日中の体調が良いときに少量から試すと良いでしょう。

経皮感作と保湿の重要性

乳児期のアトピー性皮膚炎では食物アレルギーを合併するケースがよくあります。
最近の研究では、乳児期早期から保湿剤を使用して湿疹を良くすることで、アトピー性皮膚炎の発症を予防することがわかりましたが、食物アレルギーへの予防効果は認めませんでした。

現在、ステロイド外用薬を使用してしっかりとアトピー性皮膚炎を治療することで、食物アレルギーの発症を予防できるのかが研究されています。

正常な皮膚は異物が入り込みにくい作りになっています。しかし、皮膚に炎症がありバリアが壊れた状態だと、異物が入り込み、それまでアレルギー反応を起こさなかった成分にも反応するようになることがあります。これがいわゆる“経皮感作”です。保湿剤やステロイド外用薬を使ったスキンケアで皮膚のバリア機能を回復させ、経皮感作を防ぐことが重要だと考えられています。

画像: 出典:海老澤 元宏(監)「食物アレルギーのすべてがわかる本」講談社, p72を参考に作成

出典:海老澤 元宏(監)「食物アレルギーのすべてがわかる本」講談社, p72を参考に作成

保湿の方法

1)1日1回、低刺激性の石鹸を泡立ててやさしく全身を洗う
2)丁寧にすすぎ、やわらかいタオルで水分をふきとる
3)入浴後はできるだけすぐに保湿剤を塗り、皮膚から水分が蒸発しないようにする

画像: 出典:海老澤 元宏(監)「子どものアレルギーのすべてがわかる本」講談社,p49を参考に作成

出典:海老澤 元宏(監)「子どものアレルギーのすべてがわかる本」講談社,p49を参考に作成

まとめ

食物アレルギーを予防するために、妊娠・授乳中に母親が食物を除去したり、赤ちゃんの離乳食の開始を遅らせたりすることは推奨されていません。食物アレルギーと診断された場合も、必要以上の除去は不要です。アトピー性皮膚炎が合併している場合は、スキンケアをしっかりと行い湿疹を良くして経皮感作を予防することが重要です。

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