他の子どもと見た目が違っているとなんだか可哀想
保育園でそっくりおかずを作った時のお話です。
お家で調理してごはんを食べるときは、個別で調理したメニューでも見た目を普通のものに似せて作ることがあると思います。
給食では取り間違いを防ぐ目的で、わざと見た目が異なるように作ります。
担任の先生は、他の子どもと見た目が違っているとなんだか可哀想だなと感じたため、翌日からできるだけそっくりに作るよう栄養士に伝え、その通りに調理していくことに決まりました。
このクラスには食物アレルギー児が3人います。
①鶏卵アレルギー、②小麦アレルギー、③鶏卵と小麦アレルギーの、3人です。翌日のメニューはハンバーグなので、そっくりおかず向きなメニューでした。
調理から担任の先生への受け渡しまでは、いつも通り順調でした。
ところがこの園は建物の都合で、アレルギー児はできるだけ席を離して1つのテーブルを囲んでいたため、子どもを座らせる前に並べたら、どれが誰の除去メニューかわからなくなってしまいました…。
幸い、3人とも鶏卵と小麦除去ハンバーグが提供されていたので、問題なく食べることができました。
家庭とは違って給食は複数の人の手を通して提供されます。
そして、預かる子どもが多いほどアレルギー以外にも気を付けなければならない物事が増えていきます。
今までは見た目ですぐに判別できていた除去メニューでしたが、突然そっくりおかずにしてしまったためにルーティーンが崩れ、普通のハンバーグと間違えないよう注意を向けるあまり、3人のごはんがわからなくなってしまう、まさかのミスを犯してしまったのです。
「学校給食における食物アレルギー対応指針/文部科学省 H27年3月」の20ページでは、取り間違いを防ぐ例として見た目を変えて分かりやすくすることが挙げられています。
元々はこれに倣って除去メニューを提供していたので、そっくりおかずに変更してミスをしてしまった状況は、とても残念でなりません。
担任の先生としては、みんなと同じものが食べたい、見た目が違っていて気になるなど、子どもたちの声をそばで聞いているので可哀想に感じたのでしょうが、そんなときはぜひ、食物アレルギーをみんなで考えるチャンスとして、そっくりじゃないおかずを活用して欲しいと思います。
認定食物アレルギー管理栄養士「根路銘寿々(ネロメスズ)」
老人ホーム、療養型病院、保育園などの施設に15年以上勤務した経験をもとにイラストやコラムを書いていただいています。
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